皆様こんにちは。進撃のボクヲタ、今回はスペシャルインタビュー編です。
日本が世界に誇るモンスター・井上尚弥選手の専属美容師をデビュー戦の時から務めている、EARTH横浜店の上園義幸さんにがっつりお話をお聞きして参りました!
上園さんとは以前からお互いにインスタをフォローしており何度かDMでやりとりする仲でしたがお会いした事はなく、この日ついに初対面。彼に聞くことリストをA4用紙3枚に纏めて、シャワーで身を清め自分なりのヘアセットで整えてから突撃しております。その一部始終をどうぞ。
ちなみに同じビルの3階・4階が大橋ボクシングジムで、1階がEARTH横浜店です。
井上尚弥と上園義幸の出会い
上園義幸さんはEARTH横浜店の代表取締役。店舗を運営しつつ自らもプレイヤーとして接客し活躍中のトップ・ヘアメイク・アーティストです。
福岡の専門学校で美容を学び東京へ
鹿児島県薩摩川内市の出身で、俳優の山田孝之さんとは小・中学校が一緒でゲームセンターで遊んだ思い出があるという上園さん。美容師を目指したきっかけは何だったのでしょうか。
「知り合いが美容学校に通ってるのを見て、凄く楽しそうにしてたので興味を持ちました。美容師の仕事について調べたり美容学校の体験授業に行ってみてこの道に進む事を決め、福岡のハリウッドワールド美容専門学校に入学。卒業後にEARTHに入社しました。最初の配属は銀座店でプレイヤーとして経験を積むには良い場所だったのですが早めに経営者の道にも入りたくて、その時にそのポジションが空きそうだったのがこの横浜店なんです。異動してスタッフとして勤務→店長→代表となり今に至ります」
銀座店から横浜店に異動。それで上の階に大橋ジムが入居しているこのビルに来て、尚弥選手と出会うのですね。
尚弥選手を担当するきっかけ
どういうきっかけで担当することになったのでしょうか。
「ビルオーナーからの紹介です。これから日本を背負って戦っていくボクサーが大橋ジムに入るから紹介するね!と言われて、それでお会いしたのが最初です」
初対面の尚弥選手の印象はどう感じましたか?
「眉毛が細くて襟足が長くて、正直…この人が日本を背負って戦うの?って半信半疑でしたね笑 今だから言えますが^^」
その半信半疑が確信に変わっていくストーリーがまた面白いです。尚弥選手を担当する前からボクシングは好きだったんですか?
「親父がボクシング好きだった影響で、畑山隆則さんや竹原慎二さんの世界タイトルマッチは実家のテレビで一緒に見てました。畑山さんと坂本さんの試合とか凄く記憶に残ってます!過酷なスポーツというイメージを持ってましたが、まさか今こうしてボクサーの方々の美容師を担当しているなんて当時は想像もしませんでした。ご縁に感謝です」
専属美容師の担当範囲
「担当範囲はCM撮影、動画撮影、ブランド撮影、TV収録、ポスター撮影、授賞式、試合会見、前日計量、試合当日のヘア全般ですね。カット+スタイリングの時もあればスタイリングだけの時もあります」
長さをキープする為の普段の日常的なカットも全て上園さんが?
「普段のカットに関しては尚弥さんが別の所で切ってる場合もありますし、僕がカットする時もあります」
上園さんが担当する時、場所はどこになるんでしょうか。
「尚弥さんがこのお店に来て下さる事も多いです。カットやカラーリングの時もあればヘッドスパだけで来店される時もありますし、ジムで会見をやる時なんかもここ(お店)ですね。あとは必要に応じて僕が現地に同行してます。都内の撮影場所や外国での撮影、試合での海外遠征も同行します」
日本プロスポーツ大賞を受賞し、総理大臣からトロフィーを受け取る時の尚弥選手のヘアスタイル。明るいハイライトを入れつつ、程よくウェーブもかかっており超カッコ良かったのが記憶に新しい!
接客中の会話について
美容室で接客中に雑談するしないは人によると思うんですが、尚弥選手はどんな感じなのか興味深いです。
「お互いに不要な雑談はしないです。プライベートな事も聞きません。振ったら気を使って話してくださるのですが、それより大切な”必要な会話”を最初にします。どんなスタイルのセットにするか?の意識合わせです。それが3分ぐらいですね。それ以上喋るとお互いに下らない事を言い合ってしまうので^^」
こういうスタイルにしたいんだ~の尚弥選手からの要望はイメージ写真を持ってくるのか、それとも口頭で伝えて来るんでしょうか。
「カラーは写真を持ってきてくれて、カットは口頭が多いです。尚弥さんが伝えてくれる言葉と、僕の中でのイメージを経験と洞察で具体化させていきますが、あまり細かく聞き過ぎない様にしてます。聞いて良い事・聞くべきじゃない事を明確にしてます。それでも違ったら早い段階で修正して理想の状態に寄せていきます」
細かくは聞かない、は上園さんのプロ意識ですね。少ない会話で読み取って理想を叶える専属美容師!というプライドを感じます。カットやスタイリングなどは上園さんですがシャンプーは別スタッフになるんでしょうか。
「状況によってはそうですが、尚弥さんを接客するスタッフは限定してます。あのスタッフのシャンプーは上手いって言って下さるので」
「その中でもスタッフ間で私が行きたい、僕が行きたいとなり尚弥さんのシャンプー争奪戦が店内で勃発する事もあります^^その時は限定しているスタッフの中でも自主的にやりたい!と手を挙げる人に任せる様にしています」
長く関係が続いている理由
2012年10月のプロデビューから今年で12年。尚弥選手と上園さんも12年。変わらず関係が続いている一番の理由はどういうところがポイントなのでしょうか。
「僕を選んでいただいている理由をご本人に確認した事は無く、あくまで自分の想像ですが…尚弥さんは自分のヘアスタイルにとても強い理想を持ってます。求めるレベルが高い。それに対して僕が《尚弥さんの理想》を研究して追求して努力してる事が伝わってるからじゃないですかね。尚弥さん自身が努力する天才なので、そこが尚弥さん的には良いのかなと。コレやばいな…違ってたらどうしよう笑」
きっと違ってないと思います^^尚弥選手の求めるレベルが高いというのは具体的にどういう所ですか?
「追及度がとんでもなく高いです。カットはミリ単位。もっとトップのボリュームが欲しい。もう少し仕上がりに束感が欲しい。前髪を下ろす時は毛先のバランス感まで撮影現場や会見の場でも追及されます」
ヘアスタイルに拘りの強いボクサーと美容師。それぞれその道のプロ同士、求める事・求められる事を分かり合ってるから長く関係が続いているという事ですね。
「実は…尚弥さんを担当し始めてから不安で眠れない夜が続いた時期がありました。最初にLフライ級で世界タイトルを獲ってから、初防衛戦ぐらいの頃です。自分のカットのせいで負けたらどうしようって。減量に関しての知識は無いので分かりませんが、減量終盤の時は髪をセットしてても肌質が違うのが分かる。勝って欲しい。この人に勝って欲しい!と思う程、自分が髪に手を入れたせいで負けたらどうしようとか考え過ぎて不安になってしまって…でもナルバエス戦で吹っ切れました^^この人は負けないわって。今はもう、自分が美容師として出来る全ての努力で接したい。シンプルにそういう気持ちです」
専属美容師から見てココが凄い
専属美容師として接する中で上園さんが思う「ボクサー井上尚弥のココが凄い」を教えてください!
今でも必ず対面で予約
「毎回、必ず予約のためにお店に来て下さるんです。予約だけなら電話1本かLINE1通で済む話じゃないですか。それなのに今も変わらず店内まで来て、声を掛けて対面で予約してくださるんです。リングの上で試合を見せるのがボクサーですけど、僕は尚弥さんのそういう人間性を感じられる場所にいる事を嬉しく感じると共に、尚弥さんを人として尊敬してます」
カット中もスパー動画を見ている
「カットやカラーリングの最中も、自分のスパーリング撮影動画を見てたりするんです。練習が終わった後の時でもです。その日の自分の動きをチェックしていて、ここでも強さを追及しているんだな…と感心してます」
自分の理想を追求し続ける
「カットはミリ単位、スタイリングはボリューム感・束感に拘ります。カラー中に小さい産毛1本を指して《ここ、色が乗ってないです》と。そんなところまで見てるんですね?と驚いた事がありました。ボクシング界の顔なので、いかにビジュアル面でもカッコよく在るかの強い意識からなのだと思います。髪型だけでなくファッションも。専属スタイリストの高木さんという方がいらっしゃるんですが、どれだけ尚弥さんに服を似合わせられるか凄く研究されてるのが同じ撮影現場に居ても伝わります」
井上尚弥専属スタイリストの高木さん…いつかお会いしてお話を聞いてみたい!
試合当日は遠方からファン殺到
上園さんが世に広めた《尚弥ヘア》聞けば、遠方から尚弥ヘア希望で横浜まで通うお客様がいらっしゃるとか。
「沢山いらっしゃいます。というか増えてます^^お客様の中には野球選手やサッカー選手など他のスポーツ選手のヘアスタイルを希望される方もいらっしゃますが、EARTH横浜店の人気NO.1はダントツで尚弥ヘアです」
ヘアスタイルまで真似たい尚弥ファンからしたら、同じ美容師さんに担当して貰えるなんてプレミア感ハンパ無い!
「そう感じていただけるのはとても有難いですね。東京で尚弥さんの試合がある時、試合前日と当日は遠方から試合観戦に来たファンの方々からのご予約を多くいただきます。皆さんとても熱心で、どの試合のヘアスタイルが良いとか、いつの記者会見の時のが良いなどリクエストは様々で具体的です。一番人気はドネア2!」
試合エピソードの振り返り
上園さんに試合の時の思い出で印象的なエピソードを振り返っていただきました。
グラスゴーで事件勃発のエマロド戦
「WBSSの準決勝。僕もグラスゴーに同行しました。海外風ベリーショートヘアで、色もブリーチしてグレージュのさっぱりしてカッコ良い仕上がりです」
「尚弥さんのホテルの部屋に行って髪を切るんですが、この時部屋が暗めで足元が見えなくて…床に置かれていた体重計を蹴ってしまったんです。怒られましたね。《何やってんですか上園さん!それが壊れて体重を計れなくなったら命取りになるんですから!》と。ガチトーンではなく冗談ぽくですけどね^^」
当時無敗のエマロドに2回TKO勝ち!ベリーショートヘアのスタイル+鮮やかな倒しっぷりが最高にマッチしてました。体重計は蹴っちゃダメでしょう上園さん笑
ドネア2スタイルは不動の人気NO.1
ファン投票でも尚弥選手本人の満足度でもこれまででNO.1の尚弥ヘアがこのドネア2!
「ドネア2のテーマは黒と白。二カ月前から仕込んでました。試合当日に根元2センチは黒い地毛である事も含んでのスタイルなので、その状態を完成として二カ月前からブリーチして色を抜きます。色合いの進捗を確認しながら仕上げたスタイルで尚弥さんご本人の満足度も高く、ファン人気もとても高いです」
1ファンの意見としてもドネア2が一番カッコ良いと思います!あの時、駅の構内や街中で試合のポスターを見かける度に銀髪スタイルのモンスターが視界に入っていたのですが、あまりにもカッコ良過ぎました。
対戦相手ポール・バトラーがEARTHに来店!
「公開練習で大橋ジムに来た帰りに、同じビルの1階にあるウチにフラっとバトラーが来たんです。ここで髪切れるの?みたいな感じで」
「挨拶からカウンセリング、カットまで全て英語。なんとかカタコトの英語で頑張りました^^尚弥さんの世界戦の対戦相手のカットを自分が担当するなんて、さすがに二度とないかも?という経験かと」
「オーダーはミリ単位。縦のトップが9mm、横が3~4mmでの調整でした。とてもナイスガイだったので少し感情移入した部分もあり、勝てとは思いませんがベストを尽くして頑張れ!という気持ちで試合を観ていたので…バトラーの勝負に行かない戦いぶりに正直言ってがっかりでした(苦笑)」
フルトン戦はEARTHで《挑戦者カット》
「フルトン戦の試合35日前に尚弥さんが《今回の僕は挑戦者なのでバッサリ切ります!》と宣言されてスイッチが入った様に感じました。その宣言の意図を質問して確認したわけではありませんが、おそらく初のSバンタム級で自分より大きな骨格の選手達に挑む大勝負。勝つことへの集中を最大限に高めたい!そんな思いからの言葉だと受け止めて、耳周りを刈り上げたトップ短めのスタイルです」
「試合の日、ここ(EARTH) でカットしたんです。当日なので、遠方から来て尚弥ヘアにしてから試合を応援に行こうとしているファンの方が店内に沢山いらっしゃる状態。皆が尚弥さんを見つけて《本人がいる!》となるわけですが、フルトン戦を数時間後に控えて集中を研ぎ澄ましている尚弥さんを見て、さすがに誰も話しかけなかったですね。でも皆《見れて良かった。姿が見れてラッキーでした》と言ってたのが印象深いです」
Sバンタム級への転級初戦でフルトンという評価の高い王者に挑んだ試合。髪型にも《挑戦者なのでバッサリ切ります!》という発言があったというエピソード+あのミラクルな勝ちっぷりがリンクして、改めてあの勝利の感動が蘇ります。
ファンからの質問Q&A
SNSでボクシングファンから上園さんへ質問を募集し、それに答えていただきました。
美容師 上園義幸の3つの拘りと夢
ヘアメイクアーティストのプロとして、上園さんが心がけている上園式の「3つの拘り」についてお聞きしました。
選手のモチベーションが上がるスタイリング
ボクサーは入場から試合、試合後のインタビューまで多くの人から見られる職業です。その選手らしさが100%出せていて且つ選手本人のモチベーションが上がるヘアスタイルに仕上げたいという思いが何よりも強いです。
周りから似合ってると言われるスタイル
選手本人のモチベーションが上がるだけでなく、試合を応援するファンや関係者の方々から見ても似合っていてカッコ良いヘアスタイルであって欲しいんです。なので基本は選手の要望を聞きながらも、提案の機会があればトレンドを反映したオリジナルを一緒に考えていきます。
スタイリング(自分で再現)しやすい髪型
毎回美容室でスタイリングするのではなく自分でセットする機会の方が多い選手がほとんどですので、自分でセットする際に再現しやすいスタイルというのも大切なポイントのひとつです。
どれも凄く納得感があってストンと落ちます!こういう美容師さんが担当だったら信頼して任せられますよ。最後に上園さんのこれから先の目標・夢を聞かせてください。
これからの目標・夢
「僕はEARTHという美容室が好きで、EARTHという会社が大好きなんです。今は自分が横浜店のFCオーナーであり代表という立場ですが、そういう人を自分の後輩の中から出していきたい。1店舗だけじゃなく多店舗展開していきたいです」
第二、第三の上園義幸を作っていきたい!という強い思いをお持ちなのですね。
「はい。美容師という職業が好きなので、経営者ポジションをやりつつもプレイヤーとしてもっと様々なお客様を接客していきたいです。尚弥さんを筆頭に、スポーツ選手ってファンを元気にして感動を与えられるじゃないですか。そういう人たちを美容というタッチポイントから応援出来る事にとてもやりがいを感じております」
素晴らしい!ちなみにEARTHの店舗代表になるとどれぐらい稼げるのでしょうか。この記事を読む読者の中から、夢があるなら美容師を目指したいと思う人が出て来るかもしれません。
「アースホールディングス社長の年収は3億円以上と報道されてますし、FC社長でもベンツのゲレンデやフェラーリに乗ってますので夢があると思いますよ!」
取材を終えて
お会いする前は、取材を通じて尚弥選手の知られざる素顔が垣間見えるエピソードが聞けそうだなと期待していました。ですが対面してお話を聞くうちに「井上尚弥選手の専属」という事より「美容師・上園義幸」が持つ価値観や熱い思いに引き込まれていく自分が居ました。
そんな上園さんだからこそ、日本が世界に誇るスーパーチャンピオンの専属美容師として長く良い関係性を築き、経営者兼トップ・ヘアメイク・アーティストとして活躍されているのだと思います。この記事を読んでくれている皆様にもそれが伝わっていれば嬉しいです。
上園さんを指名できるの?
指名出来ます。出来ますが、担当選手の試合前日や当日はファンからの予約も多く、それ以外の日でも飛び込みで指名出来るかというと違いますので事前の予約は必須でお願いいたします。
興味を持った方は是非、上園さんの接客を受けてみてください。今ならまだ新規指名も受けてくださってますよ!その際は《進撃のボクヲタを見て予約した》と言っていただけると僕が大喜びします^^
いや~。尚弥選手のヘアスタイルへの拘りぶりを実際に接客している上園さんから聞くことで、より強さの秘密にまで触れられた様に感じますし、専属美容師の目線でボクサーへの思い聞くという未知の世界を初体験+それが素晴らしい内容で最高の時間でした。取材が楽しくて楽しくて。
以上「尚弥ヘアの仕掛け人!井上尚弥の専属美容師 上園義幸」でした。上園さんありがとうございました!
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